遺言をしたいと考えたら ー 自筆証書遺言を例に

 「遺言をしたいけど、どうやってやればいいのか」というご相談を受けることがあります。このころは、それほど大きくない書店でも、遺言に関する本を多く目にします。以前は、遺言書の作成をお勧めしても「遺言をするほどの財産でもないから」とか「遺言なんて大げさだ」といった反応が多かったのですが、近時、遺言に対する意識が変わってきたのは確かなようです。

 また、最近では「遺言を作ったみたけれど、これでいいのか」というご相談も多くあります。先に挙げた遺言に関する本の中には、驚くほど詳細に遺言書の作り方を説明しているものもあり、こういった本などを参考に、とりあえずご自身で遺言書を作ってみる方も多くなっています。

 そこで、当事務所が遺言に関するご相談を受けた際に、どのように回答・アドバイスしているのかを、自筆証書遺言を例にして、簡単にまとめてみました。 

自筆証書遺言とは

 自筆証書遺言とは、遺言者が、①遺言の全文、日付及び氏名を自書するとともに、②これに印を押すことで作成する遺言をいいます(民法968条1項)。

自筆証書遺言のメリット

遺言作成の事実を誰にも知られない

 自筆証書遺言のメリットは、何といっても、遺言をした事実を誰にも知られないという点にあります。

他の方式による遺言のような様式は必要ない

 公正証書遺言秘密証書遺言のような公証人・証人の関与は必要でなく、自分限りで遺言を作成することができます。

費用がかからない

 公正証書遺言秘密証書遺言では、遺言の内容に応じた公証人報酬を支払う必要がありますが、自筆証書遺言では、このような費用はかかりません。

自筆証書遺言のデメリット

全文を自書する必要がある

 自筆証書遺言は、遺言の全文を「自書」する必要があります。パソコンを使うことはできません。

方式不備で無効とされるリスクがある

 作成に誰の関与も必要としないというメリットの裏返しですが、遺言者が法律の要式を理解していないと、方式不備の遺言としてその効力が認められなくなるおそれがあります。

紛失や変造のリスク

 公正証書遺言の場合、遺言書は20年間公証役場に保管されるため、遺言書を紛失したり、何者かによって変造されるといった危険はありません。一方、自筆証書遺言の場合、遺言書を自分で保管するか誰かにその保管を依頼する必要があるため、紛失や変造のリスクがあります。

遺言者の真意が争われる可能性がある

 この点も、自筆証書遺言が誰の関与も要しないで作成できることの裏返しですが、遺言の内容が一義的に判然としない場合には、その解釈を巡って、受贈者や相続人の間で紛争が起きる可能性があります。

検認手続が必要

 自筆証書遺言を執行するためには、家庭裁判所で検認を行う必要があります(民法1004条1項)。
 検認については、こちら

紛争を防止するために

 自筆証書遺言は、格別の費用もかからず、手軽に作成できるというメリットがあります。一方、自筆証書遺言のデメリットの多くは、遺言が効力を発生した後に顕在化するものです。つまり、遺言の効力が問題となる時点では、遺言者本人はすでに亡くなっており、問題の紛争に関与することはありません。その意味では、遺言者本人にとってデメリットは大きくないのかもしれません。

 しかし、遺言の効力が否定される、つまり遺言者の意思が相続に反映されなくなるのでは遺言をした意味がなくなりますし、また、そもそも、自分のした遺言を巡って相続人等が争うのは、たとえその時点で自分が亡くなっているとしても、遺言者の本意ではないでしょう。

 そこで、どうしても遺言の存在自体を誰にも知られたくないといった特別な事情がない限り、遺言書作成のご相談をいただいた場合には、公正証書遺言の作成をお勧めしております。また、自筆証書遺言を作成する場合でも、その内容や形式をチェックし、その保管方法や取扱いについて特別のアドバイスをしております。