Q&A「すべての事件が裁判員裁判となるのですか?」− 裁判員裁判の対象事件

 すべての刑事事件が裁判員裁判の対象となるわけではありません。裁判員裁判の対象となる事件は、一定の重大事件に限られています。

裁判員裁判の対象事件

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条1項は、原則として裁判員裁判の対象となる事件について、以下の2つを規定しています。

  1. 死刑又は無期の懲役もしくは禁錮に当たる罪に係る事件
  2. 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

法定刑に死刑、無期の懲役・禁錮がある罪

 まず、法定刑(その罪を犯した者に科すことができるものとして法律に規定されている刑罰の種類)に、死刑、無期懲役・禁錮がある罪に関する事件が、裁判員裁判の対象事件となります。

 例えば、現住建造物等放火、殺人、強盗致傷などの罪がこれに当たります。

法定合議事件のうち、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪

 次に、裁判所法第26条第2項第2号は、3名の裁判官が合議体を作って裁判を行う事件(これを「法定合議事件」といいます)について規定していますが、法定合議事件のうちで、故意の犯罪行為によって被害者が死亡した事件が、裁判員裁判の対象事件となります(さらに、1に該当する事件も、重複を避けるために除かれています)。

 例えば、傷害致死、保護責任者遺棄等致死などの罪がこれに当たります。

裁判員裁判対象事件の例外

例外を設ける必要性

 裁判員裁判の対象となる事件がすべて例外なく裁判員裁判となるかといえば、必ずしもそうではありません。裁判員裁判の対象事件であっても、例外的に裁判員裁判としないことが認められています。

 一般国民にとっては、裁判員に選ばれて刑事裁判に関与しなければならないというだけで、その精神的負担は大きいと思います(対象事件は、上記のような重大事件です)。たまたま裁判員として関与する事件において、例えば被告人が裁判員に危害を加えるような発言をしており、被告人の属性その他の事情からその危害が現実的なものと考えられる場合には、なおさらでしょう。そのような場合にまで、一般国民に対して「裁判員として(職業裁判官と同じように)公平・公正な判断をしなさい」と強制することは、国民にとって負担が大きすぎます。

 そこで、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第3条1項は、裁判員裁判の対象事件であっても、以下の要件に該当する場合には、裁判員裁判としないことを認めました。

例外の要件

① 裁判員が畏怖するような事情の存在

 まず、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情があることが必要です。

② 裁判員等に対する生命、身体、財産への危害、生活の平穏への侵害のおそれ

 次に、①の事情によって、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく害されるおそれがあることが必要です。

③ 裁判員等の畏怖による裁判員裁判遂行の困難さ

 さらに、②のようなおそれから、裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認められることが必要です。